土地ブームの背景としては,国民の土地に対する執着心や超金融緩和による金余りが見逃せないのですが,もう1つ,土地利用の変化も重要な要素となっています。
土地利用の変化
企業の土地資産の活用日本経済のウェイトが,重厚長大型産業からIT産業などの軽薄短小型産業や金融業・サービス業などに移ってくると,生産活動に必要とされるインフラが,巨大・集約型のものからコンパクトでどこへでも移動できるものに変化し,従来からの土地利用にも変化が現れてきました。
たとえば,東京などの大都市にある造船会社を取り上げてみましょう。
まず,造船不況であまり使われなくなった工場の敷地をオフィスや住宅用に転換します。
この転換によって,都心部の近辺などで高まっているオフィスや住宅の需要にこたえます。
そして同時にこのように使わなくなった土地資産を再開発事業などに活用することによって,会社の本来の事業によってではないにしても,業績を好転させることができます。
こうした発想で,社有地の再利用が図られました。
企業の土地資産の活用で,企業の収益は増え,同時に衰退していた工場地帯は新しくビジネス街や住宅団地に生まれ変わりました。
このような土地資産のリストラクチャリングの例は,ほかにもたくさんあります。
規模が大きいものでは,大手鉄鋼メーカーの工場施設や工業団地が,総合的なレジャーセンターに変身したものもあります。
住友金属工業の土地(大阪市)がユニバーサル・スタジオ・ジャパンに,新日本製鍼の土地(北九州)がスペース・ワールドに変わったのがその一例です。
土地を担保に融資を得て事業を行い,事業で得られた資金でまた上地を購入してさらなる融資を獲得するというふうに,上地を担保にした融資は,バブル経済崩壊まで積極的に進められていきました。
節税のための土地利用バブル期にもう1つ土地利用を促進する原因となったものがあります。
地価の上昇で土地の含み益が増える場合,課税上の評価額が高くなり,固定資産税や相続税などの負担が大きくなります。
そこで貸ビルや貸マンションなどの上物を作って土地を有効に利用することにより,節税が図られる場合があったのです。
つまり,節税対策の面からも土地利用が促進されました。
これについて,簡単な例をあげましょう。
中小企業のオーナーである経営者に相続問題が起きたケースを考えてみます。
その会社の事務所や工場の敷地が値上がりして大きな含み益がある場合,オーナーの持株の相続については,その土地の含み益のために株式の評価も高くなり,相続税の負担が相当に大きくなってしまいます。
この税負担の重さによっては,先代から事業を受け継ぐのが不可能になりかねません。
このような場合に備えて,先代の経営者が生前に,その敷地内に貸マンションか貸ビルを銀行から資金を借り入れて建てるとします。
上地の有効利用で貸ビルなどからの賃料収入が得られるとともに,貸ビルなどの上物付きの土地は課税上の評価減があります。
また借入金の分だけ会社の資産が減少し,持株の課税上の評価が減額される結果,相続税の負担がその分だけ軽くなります。
また,相続に関係なく,貸ビルなどの不動産の保有は,そのための借入金の利息や建物の減価償却費などを経費として落とすことで,節税が図れます。
ただし,節税は,土地の積極的な活用を引き起こす原因としては,副次的なものです。
不動産金融の多様化バブル経済崩壊後,地価が下落を続け,長引く不況により企業のリストラクチャリングが進みました。
使わない工場跡地や厚生施設などを抱える余裕がなくなった企業は,所有する多くの土地を手放す傾向にあります。
また,手つかずのプロジェクトが資金不足から休止したり,破綻に追い込まれたりしています。
それらが土地の供給過剰を生み,さらなる地価下落を引き起こす原因ともなっています。
重視される収益性土地活用に対する金融機関など資金の供給側の対応も変わってきました。
地価上昇の勢いが激しかったころは,土地が持つ本来の価値以上の担保力を見込み,積極的に貸出しをしていました。
それが,地価が下落を続ける現在は,上地の持つ価値をより厳しく見定めるようになっています。
不動産の担保価値を評価する場合,今まではその資産価値が主に注目されてきました。
最終的に担保物件の処分価格で,貸付債権を保全することができるかどうかがポイントだったのです。
しかし最近では,資産価値も同様に大切ですが,それに加えて収益性という点が重視されています。
つまり,土地そのものの価値もさることながら,そこで生み出される事業(プロジェクト)がどれくらいの収益を生み出すかという見方に立って金融機関は融資を行っており,「プロジェクト・ファイナンス」の色合いが濃くなっています。
具体的に言うと,融資案件である土地活用のプランの収益性の検討が,担保価値の評価とともに重要になります。
仮にそのプランの収益性が低いものであり,ほかにもっとその物件にふさわしい収益性の高いプランが考えられる場合は,融資側から情報を提供し,いっしょになって検討するケースもありえます。
融資側の積極的な事業参加この融資する側からの積極的,能動的な対応をさらに1歩,あるいは2,3歩進めた1つの例が,「土地信託」の方式です。
上地信託とは,土地所有者が土地の有効利用を図り収益をあげる目的で,その土地を信託銀行に信託し,信託銀行は事業の資金,企画から建物建設,テナントの募集・賃貸,建物の維持・管理などを行い,その管理・運用の成果を信託配当(管理費などの経費,信託報酬を差し引いた額)として土地所有者に交付するものです。
そして信託が終了すると,土地が建物とともに土地所有者に返還されるので,土地所有者は実質的に土地を手放すことなく,信託銀行の持つ不動産業務のノウハウを利用し,収益を安定的に長期にわたり受け取ることができるのです。
土地信託と同様に,積極的,能動的に資金を提供し,かつ事業に参加する方式としては,ほかに「事業受託方式」「等価交換方式」といったものがあります。
これらの方式では信託銀行のほかに,生命保険会社,大手の建設会社や不動産会社などが参入しています。
従来の不動産金融に加えて,これらの,いわば事業参加型の広義の資金供給の方式が重要になっています。
不動産証券化の流れ~今,なぜ不動産の証券化なのか
資金調達の新たな手段企業活動を維持拡大するためには,資金の調達が欠かせないことは言うまでもありません。
いかに低い金利で資金を調達するかは,企業の生死を決めかねない重大事です。
そのため,資金調達の新しい手段として「不動産の証券化」が注目されています。
不動産の証券化とは,「企業などが所有する不動産を手放し,その不動産が生み出す金銭(家賃など)を原資として元利金の支払いを行う証券を発行し,売却する金融手法」と定義づけられます。
つまり証券化とは,これまで資金調達を不動産を担保とした金融機関の融資に頼っていた企業が,自分か持つ資産を利用して直接に資本市場から行おうとする新しい手段と言えます。
では,なぜ今,不動産の証券化か注目されているのでしょうか。
これまでも企業は,銀行などからの借入のほかに,株式や社債などの有価証券を発行し,直接,資本市場から資金を調達することが可能でした。
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